日本の税収で自動車は太い柱を担っています。2020年度の租税総収入額は108兆9885億円で、このうち、自動車関係諸税は8兆8092億円。全体の1割に迫る額を占めており、国や地方自治体にとって貴重な財源となっています。行政は自動車に関係するさまざまな税収を道路の整備・維持・管理、公共サービスの提供などに役立てています。
20年度はこうした自動車税制に大きな注目が集まった一年でした。環境性能の高い車両の「自動車重量税」を軽減する「エコカー減税」の期限が21年春に迫ったからです。さらに19年秋の消費増税時に廃止された「自動車取得税」の代わりとなる「環境性能割」も、税率を1%軽減する臨時措置が20年度末に終了予定でした。このまま期限切れとなれば、自動車ユーザーの負担が増し、さらなる〝クルマ離れ〟を招きかねません。新型コロナウイルス感染症で落ち込んだ国内市場にとって、大きな逆風になることが心配されていました。
このため、自動車関連の団体や企業では「コロナ禍において増税なし」を合言葉に軽減措置の延長を求め、政府や与党などに強く働きかけました。その成果が実り、昨年末にまとまった21年度の税制改正大綱では、業界の要望が認められました。エコカー減税は新たな30年度燃費基準をベースに減免対象を見直した上で2年間延長。環境性能割の臨時的措置も21年12月まで9カ月間期限が伸びました。
しかし、喜んでばかりではいられません。そもそも日本の自動車諸税は海外各国と比べて高い水準にあります。国内では車が生活必需品となっている地方が多く、税負担が重荷となるユーザーが少なくありません。税制大綱では「課税のあり方について、中長期的な視点に立って検討を行う」と記されました。これを踏まえ業界では抜本的な見直しに向けて、将来の税制議論を早期にスタートさせたい考えです。
※日刊自動車新聞2021年(令和3年)5月7日号より