ホンダ、ヤマハ発動機、スズキ、川崎重工業という世界に名だたる4社の二輪車メーカーが日本にはあります。しかし、ホームマーケットである国内の二輪車市場は1982年の329万台をピークとして減少に転じ、現在はその8分の1ほどの40万台弱にまで縮小しました。
ところが、ここにきて二輪車の存在価値が再び見直され始めました。コロナ禍や多発する自然災害を背景に、機動性と経済性、さらに開放感の高い走りといった二輪車ならではの特徴に魅力を感じる人が増えたためです。じわりと広がる二輪車ブームの様子は販売台数に表れます。
ピーク時に市場の大半を占めていた原動機付自転車1種(排気量50cc以下のいわゆる〝原付〟)は、今も下降線をたどっています。電動アシスト自転車などに〝生活の足〟の座を奪われたためです。しかし、原付2種(51cc~125cc)以上のクラスは、ここ数年、販売が増加基調で推移しています。
日本自動車工業会の国内販売統計で、原付2種は2017年度から4年連続、軽二輪車(126cc~250cc)は18年度から3年連続でそれぞれ増加しました。20年度は、コロナ禍で消費全体が落ち込んだにも関わらず、原付2種は前年度比6.2%増、軽二輪は同12.6%増となりました。レジャー、フードデリバリーの用途などで需要が増加しました。
販売台数が上向きになりつつある二輪車ですが、メーカーの事業課題はたくさんあります。まず、電動化への対応です。脱炭素社会の気運が高まり、法人を中心に走行中に二酸化炭素を排出しない電動バイクを求める声が増えています。しかし、割高なバッテリーを搭載すると経済性のメリットが損なわれます。
そこで国内4社は、どんな電動バイクでも使える交換式バッテリーを一緒に開発してコストを抑えることを検討しています。足元で増加傾向にあるとはいえ、二輪車は四輪車と比べ市場規模が非常に小さいだけに、4社が力を合わせて活性化していくことが今後の成長で重要になります。
※日刊自動車新聞2021年(令和3年)5月21日号より