空中を移動する新たな移動手段として「空飛ぶクルマ」の開発が進んでいます。空飛ぶクルマはヘリコプターのように垂直に上昇、下降ができ離着陸場所を選びやすいため、道路渋滞の回避や離島・山間部の移動手段、災害時の緊急搬送など、さまざまな用途で活用が期待されています。国内では現在、2023年の事業開始を目標に、官民が一体となり技術検証や運行制度づくりを進めています。
開発状況ですが、ベンチャー企業のスカイドライブ(東京都新宿区)が18年12月に遠隔操作による無人の試験飛行を実施。同社は20年8月には、有志団体のカーティベーターと共同で、有人試験飛行に成功しました。
空飛ぶクルマの屋外試験飛行については、航空機と同様に航空法に基づく許可が必要となります。しかし、事業者からは試験飛行までの手続きが複雑すぎるという声が上がりました。そこで、国土交通省は空飛ぶクルマの安全基準や試験飛行に関するガイドラインの策定を急いでいます。
国交省は、空飛ぶクルマの事業開始に向けて、事業者による空飛ぶクルマの機体開発を後押しするため今年4月に専門部署「次世代航空モビリティ企画室」を開設しました。今後は、具体的な実証実験の計画を踏まえ、21年度中に空飛ぶクルマの試験飛行を念頭においた「試験飛行のガイドライン」を策定し、公表する予定としています。また、23年までに、性能要件や安全基準、操縦免許に関する制度を整備する方針を示しています。
さらに国交省は今年5月、経済産業省と合同で、25年に開催予定の大阪・関西万博において、空飛ぶクルマによる移動を実現するため、「大阪・関西万博×空飛ぶクルマ実装タスクフォース」の設置を決定しました。合わせて官民協議会には、新たにトヨタ自動車をはじめとした10社が加わるなど、実用化を目指して活動する国内プレイヤーの規模が拡大しています。
※日刊自動車新聞2021年(令和3年)5月31日号より