トヨタ自動車は、グループ総販売台数(2020年度)で992万台を誇る世界有数の自動車メーカーです。株式を持ち合うスズキやスバルなどを合わせた販売規模は約1500万台に達します。
近年のキーワードは「モビリティ」「仲間づくり」「全方位」でしょう。どの言葉も相関していますが、技術の進化で急速に多様化するクルマ社会に対応し、事業領域を積極的に広げています。
また「電気自動車(EV)では欧米に出遅れている」との声も聞きますが、20年以上前からハイブリッド車を手がけ、燃料電池車(FCV)では世界の先頭を走るなど、電動化技術ではむしろ同業他社を圧倒しています。電動化は市場ニーズというより各国の政策や規制、投資家からの圧力などで進んでいます。トヨタは技術進化と実用性のバランスを顧客目線で慎重に見極めているのです。
世界で約37万人もの巨艦トヨタを率いる豊田章男社長は、金融界を経てトヨタ入りし、09年から社長を務めています。創業家出身の苦労も多かったようですが、リーマンショックや東日本大震災などの苦境を乗り切るとともに新車開発にも積極的に関わり、「ウーブンシティ」構想を打ち出すなど、社内外で存在感を高めています。
その豊田社長が近年、繰り返すのが「サステイナブル&プラクティカル」。プラクティカルとは「現実的」「実用的」という意味です。社会課題の解決には規制や技術も大事ですが、何より世の中に広く受け入れられる製品やサービスを生み出すことが肝要だということです。この考えは、グループ創始者である豊田佐吉が遺した「豊田綱領」とも通じます。
〝100年に1度の大革命〟の前にも、いくつもの自動車会社が経営危機に陥り、消滅や統合の憂き目にあいました。トヨタの強さは、佐吉のDNAを歴代の経営者が脈々と伝えてきたことにあるのかも知れません。