マツダは1920年にコルク栓を製造する「東洋コルク工業」として創業した広島県の自動車メーカーです。31年に投入した三輪トラック「マツダ号DA型」で自動車製造に参入し、その後、軽乗用車「R360クーペ」や世界初の市販ロータリーエンジン車「コスモスポーツ」などを世に出してきました。
独自技術に強くこだわったクルマづくりは、今も変わりません。近年、話題になったのは「SPCCI(火花点火制御圧縮着火)」という独自の燃焼制御によって、世界で初めてガソリンエンジンの圧縮着火を実用化した「スカイアクティブ-X」です。排ガス低減や燃費改善に効果のあるガソリンエンジンの圧縮着火は20年ほど前に開発が本格化しましたが、広い運転領域で安定して燃焼させることが難しい〝夢の技術〟でした。マツダは地道に培ってきたガソリン、ディーゼルの研究成果を生かして、2019年にようやく商品化に漕ぎつけました。
このように個性的な内燃機関を強みにしてきた同社ですが、今後は厳しさを増す環境規制に対応するため、電気自動車(EV)の開発も加速しなければなりません。ただ、マツダは年産台数が200万台に届かない小規模な自動車メーカーのため、さまざまな電動車の新規開発は大きな負荷になります。
その対応に向けて同社が展開する開発戦略が「マルチソリューションスケーラブルアーキテクチャー」です。これはまずスモールカー(小型車)、ラージカー(上級車)という枠組みをつくり、それぞれの中でできるだけ部品を共通化しながら内燃機関搭載車とともにEV、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)を設計してコストを抑えるという開発思想です。
その一方、中長期的にはEV市場の拡大が進むとみて25年以降にはEV専用プラットフォームを追加します。内燃機関を重視してきたマツダですが、30年までに世界生産の25%までEVのボリュームを増やす構想です。
※日刊自動車新聞2021年(令和3年)6月18日号より