2019年度(19年4月~20年3月)の国内新車販売台数が前年度実績を下回る公算が強まってきた。上期(4~9月)ではプラスとなっていたが、消費税増税後の19年10月から20年2月まで2桁減が続いている。仮に3月の新車販売もこれまでと同水準の10%減で推移した場合、19年度累計は503万台となる。新型コロナウイルスの感染拡大による消費マインドの低下や一部車種の出荷遅れなどの影響で3月の市場はさらに下振れする可能性もあり、500万台の大台をめぐる攻防となりそうだ。
「振り返ってみれば緩やかな駆け込み需要だった」―。消費税増税前の19年9月までのプラス基調について、ディーラートップの多くは異口同音にこう指摘する。上期の販売実績は前年同期比5・6%増の262万1470台と3年連続で前年実績を上回り、6年ぶりとなる250万台の大台達成となった。9月単月では2桁増となり増税前の駆け込みがそれなりに販売を押し上げた格好だ。
一方、97年4月の5%、14年4月の8%への消費税引き上げ時に比べて需要の“山”は低かった。それだけに反動減の〝谷〟は低いとの見方が強かった。また、今回の消費増税時には自動車税の恒久減税や自動車取得税の廃止が実現し、需要の平準化が期待されていた。
ところが19年10月の実績は前年同月比24・9%減と大幅に落ち込んだ。登録車は統計開始以来、10月として過去最低を記録し、軽自動車も過去10年間で下から2番目の水準だった。消費税増税の影響に加えて、台風19号など全国を襲った自然災害が新車販売を押し下げた。11月以降は下げ幅を縮めたものの2桁減が続き、19年10月~20年2月実績は前年同期比14・0%減と低水準が続いている。
最需要期の3月はさらに市場環境が厳しさを増している。新型コロナウイルスの感染防止のため、2月開催予定だった「東北モーターショー」をはじめ、各地の自動車関連イベントが軒並み中止に追いやられた。全国のディーラー各社も販促イベントを中止し、年度末商戦に影を落としている。
新型コロナウイルスの感染拡大で中国製部品の調達が滞り、国内生産車の出荷にも影響が出始めている。ホンダでは一部車種の納期遅れが発生しており、年度内に登録する予定の車が4月以降に持ち越すケースも出ているという。現時点で納期遅れの台数はそれほど多くないとみられるが、ディーラーからは「今後、影響が広がって出荷が遅れるのでは」と危惧する声が挙がっている。
19年度の終わりまで1カ月を切り、20年2月までの11カ月累計台数は前年同期比3・5%減の445万7289台となっている。3月実績が今の低水準からさらに下振れすれば、4年ぶりに500万台を割る可能性がある。
※日刊自動車新聞2020年(令和2年)3月7日号より