【ラスベガス=村田浩子】トヨタ自動車の豊田章男社長は6日、CES2020で会見し、未来の街のあり方を探るため、人、家、小型モビリティなどあらゆるモノが相互に繋がる「コネクティッド・シティ」を静岡県裾野市につくることを明らかにした。人工知能(AI)や自動運転などの実験を行える実証都市を、子会社のトヨタ自動車東日本の東富士工場跡地に建設する。まずはトヨタの社員など2千人程度が住民となり、将来的には175㌈(約70.8万平方㍍)まで広げる計画。豊田社長は「ゼロから街全体をつくりあげる機会というのは、小さな規模であっても多くの点でチャンス」と語り、現実の街を通して将来の車とインフラの形を模索する方針を示した。
18年1月のCESで「トヨタを自動車会社からモビリティ・カンパニーへ変える」と宣言してから2年。自動車にとどまらず先端技術を実地に試す街を丸ごとつくる大事業に乗り出し、「リアルとバーチャルの両方を持つ強み」(豊田社長)を磨く考えだ。
都市の名は「ウーブン・シティ」。年内に閉鎖を予定するトヨタ自動車東日本の東富士工場跡地に建設する。着工は2021年初頭を予定し、米第2ワールドトレードセンターなどを手掛けたデンマークの建築家、ビャルケ・インゲルス氏がデザインなどを担当する。
現時点での街の構想は、高速自動運転車用道路、低速車両と歩行者専用道路、公園のような歩道の3種類に道路を分け、道で街が編まれた(ウーブン)ようなデザインにする。開発中の自動運転電気自動車(EV)「e―パレット」を活用したシェアリングサービスや移動店舗を実証するほか、水素燃料発電システムや配達システムなどは地下に集約する。車だけでなく、室内用ロボットにもセンサーを搭載し、住民の健康状態チェックなども行う。
トヨタ社員に加え、街を活用した実証実験を行う科学者やパートナー企業の従業員なども住民として受け入れる。技術の進化や自動車のあり方の変化を背景に、トヨタは自動車だけでなく移動全体に関わるモビリティ会社への転換を急いでおり、合わせて競合や異業種との協業も積極化している。今回の街づくりも「同じ志を持つ会社や個人と仲間になっていく機会」(豊田社長)と捉えており、他者の知見を借りてモビリティを中心とした新しい価値を提供したい考えだ。
※日刊自動車新聞2020年(令和2年)1月8日号より