自動車業界が100年に1度の大変革期を迎え、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の進展とともに高度化する自動車技術への対応が一層求められている中、メカニックの重要性はますます高まっている。加えて、整備メニューの提案や故障修理での車両説明といった顧客対応力が求められるなど、メカニックの仕事の幅も広がっている。自動車業界の整備士不足が顕在化する一方で、自動車の安心・安全を支えるメカニックの存在役割はより欠かせないものとなっている。そこにやりがいを見出し、これからの自動車業界を支えていくであろう各社の自慢のメカニックにスポットを当てる。
自動車の技術革新が急速に進む今、メカニックにはさらなる技術向上や知識取得が求められている。その指針となっているのは、各メーカーが独自に設けている整備技術に関する検定。多くのメカニックがより上位の級取得を目標に掲げている。また、自動車技術の高度化に対応したメカニックを育成するために、国土交通省は自動車整備士資格制度の見直しを決定。2027年以降に実施される新たな試験に向け、各自動車整備専門学校はカリキュラムや各教科科目の見直しといった対応に追われている。
メカニックの人材流出を防ぐため、ディーラー各社は待遇改善に取り組む。給与など処遇面の改善に加え、近年は酷暑対策に向けた職場環境の改善が喫緊の課題。スポットエアコンなどを導入した店舗のメカニックからは口をそろえて「快適になって作業に集中しやすくなった」との声が聞かれる。労働環境の改善は業務効率化だけでなく、女性やシニアといった新たな人材の流入につながることが期待される。
自動車整備学校では、学生数の減少が依然として目立つ。少子化やコロナ禍によって留学生の入国が遅れた影響もあるが、「若者の車離れ」も見過ごせない要因といえそうだ。国土交通省が昨年、自動車整備関係学科に通う高校生を対象に行った「自動車整備に関する高校生の意識調査」によると、3年生の約7割が「自動車整備士になりたいとは思っていない」と回答。国土交通省は全国の運輸支局を通じ、継続的にメカニックの仕事の魅力や社会的意義を発信し波及させる。また、自動車整備学校が高校と連携して出張授業を行うなど、生徒の志望度の向上に取り組んでいる。
コロナが明けた今夏、ディーラーや自動車整備学校が各地で、子ども向けのメカニック体験を実施した。イベントを企画したディーラーは「子どもだけでなく、その家族にアピールすることが重要だ」と語っている。以前と比べて快適になった整備工場の施設で、メカニックの魅力を親子で体感してもらうことでイメージアップを図っていく活動は、将来的なメカニックの人材確保の鍵となるだろう。